御休息。
 
 
 
■ くだらない話を書く。
 下北沢の線路沿い、大きなスーパーの裏あたりに、昔ながらの同伴旅館があった。たしか「かたばみ」とか「うわばみ」とか言う名で、マサコというジャズ喫茶にゆく途中、そこを通る。先日久しぶりに通り掛かると、そこが今風のシティ・ホテルに替わっていた。シティ・ホテルとは言っても、することは同じで、外側が変わったに過ぎない。
 渋谷あたりの流行が下北にも押し寄せてきたといった按配である。
 
 
 
■ ところで、その手のホテルでの勘定支払いの時、電話で、
「済みました」
 とうっかり言って、恥をかいた男がいる(私ではない)。
 もっと酷いのになると、車のエンジンがどうにも掛からず、JAFを呼んだという奴がいる。その間、ふたりで待っていたらしい。
 ま、先の場合、何と言えばいいかというと、「帰ります」とか「会計を頼みます」と言うのが妥当か。
 すると、フロントは「冷蔵庫は何をお使いになりましたか」と聞いてくる。
この場合、「赤まむし一本」と答えるのが、どうにも恥ずかしい。
かといって、「二本」という訳にもゆかない。
 ホテルによっても違うが、冷蔵庫には大抵、ビール、ウイスキイのミニボトル、赤まむしドリンクやら、カップラーメンなどが置いてある。
カップラーメンというのも渋いが、時には、鮭缶が入っていることもあって、
「コレハ、ナンダ」
 と考えたことがある。
 
 
 
■ すこし前まで、浅草や鴬谷周辺にゆくと、昔ながらのそうした旅館があった。大抵は和室である。畳の部屋と、襖を隔てて赤い布団を引いた部屋がある。窓を開けると、隣の家の台所や屋根瓦が見えたりする。
 雨のシトシト降って何もやる気のしない午後など、そういう処へシケ込んで、一日中ぐずらぐずらとしていられたらいいだろうなあ、と思うことがあるが、そこまで出かけるのが億劫でこまる。
 
 
■ 以前、......以下自粛......
 
 
■ ともあれ、この手のホテルですることと言えば、人間のイトナミの最たるものである。イトナミの中にはグロテスクなもの、なんだか滑稽なものが混じっている。
 私の友人に、その手のところに、風呂に入りにゆくという奴がいて、その際、ビールと温泉の入浴剤を買ってゆく。草津の湯とか別府の湯とかいう奴である。
 ビデオを眺め、ゆっくりと広い風呂に入り、あとはぐうぐう寝てしまうのだそうだ。
 連れがどうしているのか、それは聞きそびれた(初稿:90-12)。